« 『心はすべて「皮膚」に現れる。新装刊『花椿』がTOUCH特集に込めた思い』 | トップページ | 朝どれ野菜?夕どれ野菜?季節を知れば、新鮮なものが見抜ける! »

2022年6月11日 (土)

「抗体を持つ人」が増えても集団免疫ができない訳

以下(リンク)引用
-------------------
●新規感染者数が増えていったイギリス
参考となるのがイギリスです。2021年デルタ変異株が猛威を奮ったイギリスでは、いったんは新規感染者数が大きく減り、さらに7月上旬には感染者とワクチン接種者の合計が国民の80%以上になりました(=抗体陽性者が80%以上になったということです)。

国民の多くが抗体を持ったことに気をよくしたイギリス公衆衛生当局は、感染が収束していない段階で、社会的規制をすべて解除しました。しかし、規制解除後はワクチン接種は思うように進まず、接種率が7割あたりで停滞していました。そのため、新規感染者数は徐々に増えていきました。

そして2021年12月にはオミクロンへの急激な置き換わりが進んだこともあり、12月上旬時点で、新規感染者数が連日5万人以上、2022年1月には1日の新規感染者数がなんと27万人を超え、1日の入院者数が約3000人となりました(ちなみにイギリスの場合、入院者は感染者の2%程度で大部分が自宅療養です)。

●抗体陽性者と感染者数を比較すると
この状況を客観的かつ経時的に眺めるために、イギリス公衆衛生庁の抗体陽性者のデータとworldometerの感染者数データを組み合わせて、比較してみました(図)。

図の上半分を見ると、イギリスは2020年暮れからワクチン接種を始めたことにより、感染者とワクチン接種者が持つ「S抗体」の陽性者がぐんぐんと上昇したことがわかります。そしてS抗体陽性者が8割を超えた2021年7月時点でイギリスは社会的な規制の解除を行いました。

当時、感染者のみが持つ「N抗体」を指標にすると、約20%のイギリス国民が新型コロナに感染していたことがわかります(日本と比べて10倍以上高い頻度です)。

そして2021年8月になると、S抗体陽性者は実に97.5%に達します。つまり100%近いイギリス人が新型コロナウイルスの抗体を持ったことになります。

これまでの公衆衛生疫学の考え方にもとづけば、感染が自然に収束する集団免疫が確立されていてもおかしくありません。しかし、ワクチン接種と自然感染によって国民の大半が抗体を獲得したにもかかわらず、オミクロン株の猛威を抑えられなかったのです。

イギリスの状況を見ると、抗体の陽性率が100%近くになっても感染が収束する保証がないことがわかります。同様な現象は、デルタ株が猛威を振るったインドでも起きています。残念ながら、新型コロナは、集団免疫が成立しないか、あるいは成立してもきわめて短期間しか持たない可能性が高そうです。

ワクチンは、感染を防ぐ中和抗体以外にもさまざまな抗体を誘導し、重症化予防については依然として高いレベルの効果を維持していますが、こと感染予防を考えると、ワクチンだけでは十分ではありません。感染を防ぐためには、マスクや社会規制などの感染対策を継続して、感染者数を増えすぎないようにする必要があります。

●「普通の風邪」として扱うべきか
2022年2月21日、イギリスは、イングランドで感染者の隔離を不要とし、法的な規制をすべて撤廃しました。これからはインフルエンザと同様に「普通の風邪」として扱うようです。規制の全面的解除は世界初の試みで、壮大な社会実験といえるでしょう。

イギリスは、ワクチンの重症化予防効果で、医療崩壊はまぬがれると判断したようですが、オミクロンに代わる新たな変異株が登場したときに、再び感染拡大を招かないか不安を覚えます。

実際、規制の全面解除後、イギリスの新規感染者数は上昇に転じて、3月22日には解除前の3倍近い10万人に達してしまいました。一時的に感染者数が減少しても、少し対策を緩めただけで、新たな感染の波が起こります。残念ながら、新型コロナとの闘いは長期戦になりそうです。

ワクチン接種が進んでいるにもかかわらず、いっこうに感染が収束しないことを理由に、反ワクチン派の識者は「ワクチン接種など無益。自然感染して良質の免疫を獲得すべき」だと主張しています。しかしこの主張は間違っています。

新型コロナウイルスは自然感染すれば、再び感染をまぬがれるような甘いウイルスではありません。ワクチンの効果が時間の経過とともに減衰するのと同様に、一度感染したとしても、時間の経過とともに感染リスクが高まり、繰り返し感染します。感染予防策を放棄して、自然感染のみで安定した集団免疫を獲得するというのは科学的に見てきわめて困難です。

自然感染で得られる免疫よりも、ワクチン接種による免疫のほうが質の高いことが科学的にも裏付けられています。

ワクチン接種でできる抗体は、自然感染でできる抗体に比べて、ウイルスのスパイクタンパク質に対する結合性が高いため、高い感染予防効果があります。また、ワクチン接種で得られた中和抗体は、自然感染で得られた抗体よりも反応性も幅広いため、複数の変異株を中和できます。しかもワクチンでできた免疫は、追加接種で効果を高めることができます。

病原性が低いといわれるオミクロンであっても、高齢者が感染すれば重症化や死亡するリスクは依然として高く、若い世代の後遺症も無視できません。自然感染して得になることなどありません。となれば、感染予防効果は絶対的なものでないにせよ、ワクチン接種によって良質の免疫を獲得するほうが合理的です。

-------------------

 

(真鍋一郎)

« 『心はすべて「皮膚」に現れる。新装刊『花椿』がTOUCH特集に込めた思い』 | トップページ | 朝どれ野菜?夕どれ野菜?季節を知れば、新鮮なものが見抜ける! »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 『心はすべて「皮膚」に現れる。新装刊『花椿』がTOUCH特集に込めた思い』 | トップページ | 朝どれ野菜?夕どれ野菜?季節を知れば、新鮮なものが見抜ける! »

人気ランキング

  • にほんブログ村 ライフスタイルブログ ライフスタイル情報へ お勧めサイトランキングへ
2023年2月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28        

カウンター

最近のトラックバック

無料ブログはココログ