« 重炭酸塩が最も安価で安全なCOVID治療薬 | トップページ | 「抗体を持つ人」が増えても集団免疫ができない訳 »

2022年6月10日 (金)

『心はすべて「皮膚」に現れる。新装刊『花椿』がTOUCH特集に込めた思い』

オキシトシンは脳だけではなく、肌でもつくられる。

ヨガ、瞑想は心を落ち着かせる。インストラクターが「それでは、足と床が触れるところに意識を集中しましょう」とか、「吐く息と吸う息の温度の違いを感じましょう」とか声を掛け、触覚に意識を向ける。

視覚、聴覚頼りの社会では疲れる。
皮膚と心の状態に深く結びついている。

『心はすべて「皮膚」に現れる。新装刊『花椿』がTOUCH特集に込めた思い』
以下より引用
リンク

---

◆私たちは「皮膚」からも世界を感じとっている

-- あらためて傳田さんに、皮膚のおもしろさを聞ければと思います。

傳田 皮膚の働きで有名なのは、バリア機能です。体内の水分を逃さないようにするため角層を自己修復したり、紫外線による炎症を防ぐためメラニン色素を生成したりと、皮膚はさまざまな方法で身体を守っています。でも、それだけではなく、表皮をつくる「ケラチノサイト」という細胞が優秀なセンサーになっていて、じつはいろんな外部からの情報を感じとっていることがわかってきました。たとえば、音や色、光の強弱なども皮膚は感じているんです。

澁谷 音や色も、ですか。

傳田 リラックス効果のある「オキシトシン」というホルモンは、ハグやキスなど触れることで分泌されます。これも脳から分泌されていると思われがちですが、皮膚でもつくられています。
一方、アトピー性皮膚炎や乾癬(かんせん)のため肌状態が良くない人は、精神疾患になりやすいことも報告されている。つまり、皮膚に触れるものやその状態は、かなり大きな割合で、私たちの心の状態にも影響を与えているんです。でも、そこで影響を受けるのは、脳の無意識の部分。それは言語化できないから、ないがしろにされてしまい、皮膚の研究は遅れてきたんです。

澁谷 傳田さんが皮膚のおもしろさに気づいたきっかけとは、何だったのでしょうか?

傳田 資生堂に入社してはじめて、皮膚の研究に就いたのですが、最初は何をやるべきか途方に暮れていたんです。その際、海外のいろんな研究を調べるなかで、後に留学することになるカリフォルニア大学サンフランシスコ校の、ピーター・イライアス教授の研究に出会いました。
彼が提唱しているのは「皮膚のバリア機能自律性」。人の角層バリアを破壊したとき、自然状態だったら48時間ほどで回復しますが、破壊した皮膚の上を水蒸気を通さないラップで包むとバリアは回復しないんです。つまり、ラップで包むことで、肌が「もうバリアが治った」と勘違いして再生しなくなると。しかし、水蒸気を通すゴアテックス素材で包むと、バリアが治っていないと認識し、バリアをつくろうとするんですね。それ見て、僕は背筋に電撃が走った。そのときですね、「皮膚は考える」という現在につながるアイデアに出会ったのは。

澁谷 私たちは、皮膚によっても世界の多くを感じているんですね。

傳田 視覚・聴覚・触覚などの五感のなかでは、視聴覚の研究がとくに進んでいるんです。それは、「見える」「聞こえる」など、容易に言語化して伝えられるからです。でも、触覚はなかなか共有できない。たとえば、好意を持つ相手と、嫌悪感を持つ相手に触られたときの触覚や感じとるものは、異なりますよね。要は、触覚は個人の主観や環境とあまりに密接に絡み合っているので、純粋にそれだけを取り出して論じるのが難しいんです。触覚ほど孤独なものはない。

澁谷 「触覚は孤独」って、いいですね。化粧品にも活かされている傳田さんの皮膚研究のおもしろさを、お客さまにどう提示するのかは難しく、いつも頭を悩ませます。というのも、いまの話でもあったように、触覚は本人の脳や身体に、無意識に影響を与えるわけです。しかし、その影響を言葉やアートなどに落とし込もうとすると、それはもう相手へ伝えるために言語化された「情報」になってしまう。結局、自分が体験した「触感」ではなくて、言葉として与えられたものを脳で考えていることになってしまうんですよね。

◆体感の「気持ち良さ」をどのように表現し、発信するか

傳田 いま、広告は言語情報で溢れていますよね。たとえば、「○○成分が、○○細胞に働きかけて......」というように。ところが30年以上前、僕がスキンケアの部署にいたときは、みんな使用感で勝負していたんです。つまり、「使ったときの気持ち良さ」を広告でも押していた。これは単純に見えて、重要なことだったと思います。

澁谷 僕はまさにそこを今後、ビッグアイデアにしたいんです。「気持ち良い」と思うのは、基本的には脳ですよね。でも、傳田さんの研究によれば、脳の前に、肌がその気持ち良さを感じている。そこに、お客さまの意識を向けたい。実際、「クレ・ド・ポー ボーテ」のスキンケアは、「名前は知らなかったけれど、使ってみるとすごく良い」という意見が多いんです。
ほかにも成分状態が変化することを「転相」といって、肌にのせたクリームの質感が、ふと液体になる瞬間がありますよね。僕はあの瞬間が好きなんです。肌が喜んでいる感じがするし、テクスチャーって、エンターテインメントだと思っています。

-- しかし、たしかにその肌感覚を、広告の世界で伝えるのは難しそうですね。

傳田 言葉をひたすら、皮膚に注意を向けるために使うというのも、一つの手なのかもしれません。先日、ある研究会で、仏教哲学の先生によるマインドフルネス指導に参加しました。瞑想の実体験をしたのですが、その先生が参加者を瞑想に誘うときに使う言葉が、すべて皮膚感覚に関わっていておもしろかったんです。たとえば、「それでは、足と床が触れるところに意識を集中しましょう」とか、「吐く息と吸う息の温度の違いを感じましょう」とか。いろんなことに煩わされず、自分をとり戻すための瞑想の場でも、言葉を使って皮膚に注意を向けていたんですね。
澁谷 なるほど。言葉を、完結するメッセージとしてではなく、一種のファシリテーションとして使うということですね。人は文字のようなわかりやすいものがあると、どうしてもそれに頼ってしまう。でも、文章に完結するものがなかったら、そこから何かを感じようとする意識が生まれるはず。それは、新しい広告のあり方かもしれないです。

---

 

(音瀬世那)

« 重炭酸塩が最も安価で安全なCOVID治療薬 | トップページ | 「抗体を持つ人」が増えても集団免疫ができない訳 »

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

« 重炭酸塩が最も安価で安全なCOVID治療薬 | トップページ | 「抗体を持つ人」が増えても集団免疫ができない訳 »

人気ランキング

  • にほんブログ村 ライフスタイルブログ ライフスタイル情報へ お勧めサイトランキングへ
2023年2月
      1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28        

カウンター

最近のトラックバック

無料ブログはココログ