木の心地よさを科学する。5つの実験結果から見えてくる効果とは
リンクより抜粋
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森の中や木質空間にいる時に、何となく心地よく感じるという経験をしたことがありませんか?森林や木質空間には、フィトンチッドや1/fゆらぎが存在し、それらが人に良い効果を与えていると言われています。
私たちが働いているやまとわの36オフィスは様々な木材を使った木質空間。無垢材の椅子や机、棚を使っています。ここを訪れて下さるお客様から「良い香りがするね」「落ち着く空間だね」と仰っていただくことも多く、私たちも毎日とても快適に仕事をしています。
木が心地よいと感じる感覚は、どこから来ているのでしょうか?また、“心地よい”の基準はどんなところにあるのでしょうか?
癒しや安らぎを与えてくれる木の香り
嗅覚は五感の中で唯一、感情や記憶、本能を司る脳の”大脳辺縁系”に直接繋がっています。香りを嗅ぐとすぐに感情の変化が起きるのはこのためで、好きな香りをかいで気持ちが落ち着いたり、前向きになったりした経験があるという人も多いのではないでしょうか。
樹木や草などの植物は、自分自身を守るためにフィトンチッドと呼ばれる様々な物質を出しています。フィトンチッドの成分は数百種類もありますが、香りが癒しや安らぎを与えてくれる効果を持つものもあることはよく知られています。
天然乾燥ヒノキ材チップを用いた生理的リラックス効果を調べた実験があります。女子大学生19名を被験者に、目を閉じた状態でにおい供給装置によって毎分3Lの流量で供給されるにおいを90秒間嗅ぐというものです。
グラフは右前頭前野活動の様子を表していますが、徐々に鎮静化し脳がリラックスしていることが分かります。左前頭前野活動でも、同様の変化が見られたといいます。
また香りには好みがあるもの。別の実験では、スギやヒバの香りを“苦手である”と感じる人にスギやヒノキの香りを嗅いでもらって血圧測定を行いましたが、血圧が上昇することはなかったという結果が出ています。つまり大変興味深いことに、香り自体は苦手であると感じたにも関わらず血圧が上昇することはなく、そのことがストレス要因にはならなかったのです。
気持ちを穏やかにしてくれる木目
木材には様々な木目があります。代表的な板目や柾目のほか、所々節があるところもあったり色が異なっていたり、同じように見えても少しずつ異なっていてひとつひとつに個性があります。そんな木目には、自然界のあらゆるところに存在する1/fゆらぎが存在しています。
1/fゆらぎには、人が心地よいと感じる独特のリズムがあり、安心感を与えてくれると言われています。
もう一点、木材には細かな凹凸があります。この凹凸が光の正反射を少なくすることから、真っ白な壁紙やガラスに当たった光に比べて木材に当たった光はやわらかくなり、“まぶしさ”を吸収してくれています。
ゆらぎのある優しい見た目とまぶしすぎないやわらかな光は目にも優しく、木質空間で長く過ごしていても疲れが少ないということが言えるでしょう。
“木のぬくもり”は生きもののぬくもり
「木のぬくもり」という言葉をよく耳にします。1/fゆらぎが存在する木目の視覚的効果によるリラックス効果はもちろん、実際触ってみても落ち着くようなあたたかみを感じます。そのぬくもりはどこから来ているのか、また木に触れた時私たちの身体にどんな変化が起こるのでしょうか。
異なる素材に触れた時、それぞれどんな反応があるのかを調べた実験があります。
20歳代の女子大学生・大学院生18名が目を閉じた状態で、木材(ホワイトオーク)とその他の素材に手で90秒間触るというもので、「素材をなでる」のではなく「素材の上に手のひらを置く」というシンプルな接触の実験です。
その結果、他の素材と比べて木材を手で触ることは高すぎる脳活動を鎮静化させ、リラックス時に高まる副交感神経活動が高くなるというリラックス効果をもたらすことが明らかになりました。(木材の種類をヒノキやスギに変えてみても、同じようにリラックスすることが分かっています。) また、塗装の種類を変えた実験結果もあり、これによると無垢材の方が他の塗装材に比べてリラックス効果をもたらすことが分かっています。
マウスの実験から見えてくる木材の熱伝導率の効果
また、30年以上前に行われたマウスを使ったこんな実験があります。静岡大学で行われたもので、木製とコンクリート製、鉄製の箱にそれぞれマウスを入れて成長から繁殖、第2世代のマウスの成長を観察するという内容です。
第2世代のマウス23日齢の生存率を見てみると、木造が85.1%と最も高く、コンクリート製が41.0%、鉄製が7%ほどしか生き残ることが出来なかったという結果になりました。これには、熱伝導率(熱の奪われやすさ)が大きく影響しています。
あたたかいものと冷たいものが隣り合っている時、温度が高いものから低いものへと熱が動く現象が起こります。伝導率が大きければ大きいほど、熱が移動しやすく奪われやすいのです。
木材の熱伝導率は、コンクリートの約10分の1、鉄の約500分の1。木の細胞は複数のパイプ状の繊維で構成されており、最も熱を伝えにくいとされる空気で満たされているため、熱伝導率が低いのです。つまり、熱伝導率の低い木製の箱のマウスは体温を奪われることなく過ごすことができ、生存率が高くなったと言えるでしょう。
木に触れる時“あたたかい”と感じるのは、木が私たちの体温を奪わず心地よいと感じるためではないでしょうか。
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(匿名希望N)
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