新しいワクチンや治療薬は期待できるか?(岡田正彦)
>いまのところ、新型コロナのワクチンや治療薬で、安心して使えるものは、ただのひとつもありません。コロナの時代も、そろそろ終わりに近づいていますので、いまさら新薬に飛びつき、副作用の被害だけが残ったという愚は避けたいものです。
岡田正彦 Masahiko Okada, MD, PhD
新潟大学名誉教授(医学博士)
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(2022.4.25)
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―第5回― 新しいワクチンや治療薬は期待できるか?
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<パート1> ワクチンの過去、現在
「最初の49週、米国では感染者が28,816人に達していた。翌年の同じ時期、感染者数はおよそ半減したが、この年、ワクチンの集団接種が始まっていた。同年、英国では、ワクチン接種はほとんど進んでいなかったが、それにもかかわらず感染者数が前年に比べ、やはり大きく減少していた。この減少が、果たしてワクチンの恩恵だったのか、それとも自然の増減だったのか、判断は困難」
この文章、実は、いまから65年ほど前、ポリオ(小児麻痺)が世界的に大流行していたころの記録です。
インフルエンザ・ワクチンの歴史も見ておきましょう。医薬品の信頼性を確認できる唯一の科学的方法が「ランダム化比較試験」であることは、当ホームページで繰り返し述べてきたとおりです。しかしインフルエンザ・ワクチンに関して、そのような調査は日本で一度も行われたことがありません。「ワクチンだから」効果があるに決まってる、という思い込みだけで接種が続けられてきたのです。
さすがに海外では、不十分ながらも調査データがあり、それらを集めて再評価をした、という研究発表が最近ありました。結論は、接種すれば感染を半分くらいに減らせる(かもしれない)ということと、重症化を防ぐ効果はいっさいないというものでした。日本で集団接種が始まってすでに60余年、今さら言われても・・・、という話なのです。
ランダム化比較試験は、ボランティアを偏りなく2群に分け、一方に本物の医薬品を、他方にプラセボ(偽薬)を割り当てて、追跡するという調査法です。誰がどちらの群に割り当てられたかは、本人にも、また医師にも内緒にし、コンピュータだけが知っているという状態で行われます。この一見、明快な調査法も、誤りの入り込む隙が無数にあり、それだけ製薬企業による隠ぺい、ねつ造の温床ともなってきました。
<パート2> 裏切られた新薬
インフルエンザの特効薬として有名なタミフルはどうでしょうか? 米国の当局が認可したのがおよそ20年前。私もこの薬をしばしば処方してきましたが、患者さんからは「お陰様で、あのあとすぐ熱が下がりました。よく効く薬ですね!」という言葉が返ってきます。権威あるWHOやCDCも推薦していて、世界中で使われている薬です。
数年前、イタリア、オーストラリア、米国、それに英国の共同研究チームが、タミフルの試験結果を報じた論文をすべて集め、総合評価を下したという研究発表をしました。なんとかランダム化比較試験らしきものが世界中で83件行われていましたが、まともなものは23件しかなく、分析結果も、がっかりするものでした。つまり、「インフルエンザに感染すると7日間ほど発熱などの症状が続くが、タミフルを服用すると、それが6.3日に短縮される」というもので、重症化を防ぐ効果も、まったく認められませんでした。
「薬を飲んだらすぐ熱が下がった」という人は、薬を飲まなくても治る時期だったのです。WHOもCDCも、そして専門家の言うことも、あてにはなりません。
<パート3> コロナワクチンの宿命
インフルエンザなどのワクチンは、その製造法から「不活化・・・」とも呼ばれます。文字通り、ウイルスをバラバラにして、病原菌としての活性をなくしたものという意味です。しかしコロナウイルスには、他のウイルスと決定的に異なる点があります。コロナのトゲトゲ蛋白自体が強い毒性を持っていて、致命的な副作用の元凶になっているということです。不活化してもそのまま残るため、リスクは同じなのです。
<パート4> まとめ
感染症に限らず、どの新薬も、発売当初は製薬企業の巧みな宣伝戦略に医師が踊らされ、ヒット商品のようにもてはやされます。その後、10年以上の歳月をかけた再評価(市販後調査)がなされるようになると、最初はだれも気づかなかった副作用が浮き彫りになってきます。これは、高血圧、糖尿病、高脂血症など、あらゆる病気の治療薬で一般的に認められる事象です。
医薬品は、体内の特定の細胞、特定の部位(作用点と呼ばれる)に結びつくことによって効果が発揮されるよう設計されています。しかし、人間の体は複雑ですから、ほかにも作用点がたくさんあって、予期せぬ反応が出ることになります。これが、短い時間では見つけることができない「副作用」なのです。
これまでお寄せいただいたお便りの中で多かったのは、「試験期間があまりに短く、安心できないと思った」というご意見でした。世の中には、そう思った人と、思わなかった人がいたことになります。
いまのところ、新型コロナのワクチンや治療薬で、安心して使えるものは、ただのひとつもありません。コロナの時代も、そろそろ終わりに近づいていますので、いまさら新薬に飛びつき、副作用の被害だけが残ったという愚は避けたいものです。
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(転載おわり)
(孫市)
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